第二章 酵素不足の現代生活

健康のカギを握る酵素とは

酵素には、大きく分けて

「潜在酵素」「消化酵素」「維持酵素(代謝酵素)」の3種類に分けられます。

・消化の行程に欠かせないのが「消化酵素」

・消化された栄養分は吸収され体を作っていきます。その行程を代謝と呼びますが、代謝に欠かせないのが「維持酵素」

消化と代謝。人が生きていく上で不可欠な2つの行程が実は酵素の働きによって成り立っています。

細胞は3週間から3ヶ月で分裂と死滅を繰り返していますが、そのための新陳代謝が止まると寿命を迎えます。

そしてその新陳代謝にどうしても必要な物が「維持酵素」です。維持酵素抜きでは細胞が分裂し新たな細胞にバトンタッチする事が出来ません。

寿命の期間というのは、実は酵素の蓄えのある期間の事を指しています。

これほど大事な酵素は、体内にある原材料ともいうべき「潜在酵素」から生成されていきます。もともと人間は食物から得た酵素を「潜在酵素」と引き合わせることによって、人体に欠かせない「消化酵素」「維持酵素」を生み出していました。ところが、食物中にあった酵素が戦後の農業の激変などで毎日の食卓から消えてしまいました。

酵素は忘れ去られた名脇役

酵素と発酵食品の研究を始めた頃、酵素に注目する人はいなかった。では何故こんなに大切な酵素がなかなか注目されなかったのかというと、

・酵素はビタミンやタンパク質を体内に取り入れれば無限大に生成されるものだという誤解がなかなか解けなかった。

・戦前から日本人はカルシウムとビタミンの不足をいわれており、それが研究の中心となっていた。

食品売り場にはまだまだ酵素がたくさん、という表示はみかけないが、洗剤のコーナーでは酵素パワーで油汚れを強力に落とす、というものがあります。これこそが消化酵素が人体の中で行っていることです。

こんなに重要な酵素をとりいれることが難しくなってきています。

酵素が果たす健康への役割

酵素があるおかげで新陳代謝がスムーズに行われ、自然治癒力や免疫力もアップします。

酵素はみんな専門職

酵素は現在までに判明しているだけでおよそ2400種類

最も多くの酵素が働く肝臓では500種類以上の酵素によって肝機能を正常に保っています。

そして数多くの酵素それぞれに役割分担が明確に決められています。

例えば消化酵素では、22種類の消化酵素が分泌されるように出来ています。それはどんな成分でも分解するのではなくて、それぞれの種類がその対応する成分を分解するように出来ています。

ペプシンはタンパク質を分解してアミノ酸にしますが、脂肪を分解することは出来ません。

脂肪はリパーゼで分解され、グリセリンと脂肪酸に分解します。

アミラーゼは炭水化物を分解してブドウ糖に代えますが、他のタンパク質や脂肪を分解することはありません。

また、それぞれの控えている場所も決まっており、唾液の中にはプチアリン、胃液にはペプシンやリパーゼ、膵液には膵アミラーゼやキモトリプシン、腸内にはマルターゼやエレプシンといった具合それぞれの部位に適した効果を発揮する酵素が配置されています。

実に見事な役割分担がなされていて自らの専門分野として与えられた仕事を確実にこなしていく、いわば健康維持の仕事人のような存在となっているのが「酵素」です。

食べる前から酵素は準備している

梅干しを眺めると唾液が出る、という経験はあるかと思います。

梅干しに脂肪はありませんので、脂肪を分解する酵素はでません。タンパク質を分解する酵素がでます。

ステーキを目前にすると、炭水化物と脂肪を分解する酵素が分泌されます。

そう、野球選手がボールをキャッチするために落下地点すばやく入るのに似ています。しかしながら、暴飲暴食という乱球では名選手の消化酵素も捕球しきれません。

ではなぜ、酵素がこのように事前に働けるのでしょうか。それは私たちの脳は経験から視覚で捉えた段階でその食物の成分を認識しているからです。

試しにステーキを眺めたあとでうどんを食べてみてください。普通に食べるよりは消化不良に陥ります。これは容易していた酵素では対応出来ないためです。

酵素には限りがあるのです

人は生まれもって酵素を持っており、その量は有限であるということです。が、それはあくまで「潜在酵素」に限っての場合です。「潜在酵素」はまだ「消化酵素」にも「維持酵素」にもなりきれていない「酵素の原料」といったものです。食物がはいれば消化酵素になり、どこかの細胞が破損すれば維持酵素になります。

考えたいのは、潜在酵素の量は限られているとして、酵素の量は調節可能かどうかです。

実は消化酵素は調節可能です

新陳代謝や自然治癒に使用する維持酵素は私たちが自覚的に調節することが不可能。

消化酵素こそ調節可能な酵素-消化酵素は食物を体内に入れたときのみ分泌されますので極端な話、断食すれば減ることはありません。といってもそれでは生命維持ができませんので、腹八分目というほどほどに食べるというのが一番良いということです。

昔の人は腹一杯食べると言う状況でなかったので酵素が無限大であるという誤解のままでも良かったのですが、今は違います。しかし、昔も今も酵素を消費しながら生きていることには変わりありません。ではなにが違うかというと、消化酵素の補給量が違うのです。実は酵素は体内の潜在酵素のみを使い切って終わりではなくて、外部からの補給が可能だったものなのです。それは食品の中にはいっている酵素です。「酵素無限大説」はここから発生したと思います。

火を使わない料理は動植物の酵素を役立てる

私たちは外部から栄養をとることによって生きながらえています。

酵素も同じように植物や動物から食事によって摂取しています。食事によって消化酵素を補給すれば消化酵素を使いすぎることはないはずですが、加熱調理によって動物や植物の酵素が死んでしまいます。動植物の体内にある生きた酵素は42度から70度の熱を加えられると死んでしまうことがわかっています。

北極圏などを冒険する人は、シロクマやアザラシを銃で撃ち、そのまま生で食べていたようです。生食というのは生きた酵素やビタミン、タンパク質、炭水化物をそのまま取り入れることが出来て体力いる冒険家には最適な食事だったといえます。

では普通の食事の場合は日を使ってからたりなかったのか?答はNoです。昔は、加熱した物は食卓の一部でしたが、今はレトルトを始め、加熱していないものを探す方が困難になりました。

インスタント食品は酵素の問題以外にも深刻なのですが、ここでは触れないでおきます。

発酵食品は酵素パワーの宝庫

加熱調理全盛の現在でも酵素摂取におすすめなのは「発酵食品」発酵食品とは、読んで字のごとく酵素を発する食品です。納豆、みそ、漬物、しょうゆ、梅干し、酢、鰹節など日本に昔から定着しているものです。また、日本酒やワインなども発酵食品に数えることが出来ます。乳酸菌を発酵させるヨーグルトなども食べていただきたい食品です。これらの発酵食品は、ヨーグルト菌や納豆菌、酵母菌、ビフィズス菌、などの有用菌を培養させ、生きたまま体内にとりこむことが出来る大切な役割をもっています。

発酵の作用によってその食品の栄養価が高まる作用があるほか、体内への吸収性を良くします。ビタミン、ミネラルの成分も作り出してくれますし、なによりも腸内の環境をきれいに保ってくれる働きがあります。

是非、意識的にでもたべてください。

伝統食が体を救う

健康保険制度のないアメリカでは予防医学については切実にむきあっています。そのなかで注目されているのが日本食です。日本の伝統的な食事のなかには豊富な酵素と有用菌やカルシウムが含まれている物がかにりあります。

例えば、納豆です。また、一年かけて麹を発酵させるみそも発酵食品としての完成度がかなり高いもです。ただし、酵素は熱に弱いのでみそ汁などは一度煮立ってからみそを溶いた方が味や香りも酵素も損なわずに済みます。

また、大根の漬物では食物繊維をもより多く摂ることが出来ます。

また玄米食も見逃せません。胚芽にはビタミンB,E、マグネシウム、カルシウムなどミネラル40種類以上も含まれています。

ところで発酵と腐敗は全く違います。発酵は有用菌が培養されて変化を起こしていますので腐っているのとは違います。